

まったく違います。麻という日本語があいまいなために良く誤解されます。麻という言葉の定義は、「茎や葉から繊維が採れる草本の総称」です。つまり、繊維の原料となる草は、綿(種子の毛)やココヤシ(果実の繊維)などを除いてほとんど麻と呼ばれます。ところが、麻と呼ばれる植物をそれぞれ見ていくと、植物としてまったく近縁ではないのです。表の分類という欄をご覧ください。また、ややこしいことに、実を表現するときと繊維を表現するときとで、麻の使われ方の慣習が異なります。麻の実といえば普通は大麻のことですし、服などの繊維名が記載してあるタグに麻100%とあれば、これは亜麻か苧麻の繊維100%という意味です。
| 漢名 | 日本名 | 英名 | 分類 | 繊維名 | 繊維表示※ |
|---|---|---|---|---|---|
| 亜麻(あま) | ぬめご | Flax(フラックス) | アマ科 | リネン | 麻 |
| 大麻(たいま) | 麻(あさ) | Hemp(ヘンプ) | クワ科 | ヘンプ | ヘンプ |
| 苧麻(ちょま) | 苧(からむし) | Rami(ラミー) | イラクサ科 | ラミー | 麻 |
| マニラ麻 | Manila hemp | バショウ科 | マニラ麻 | マニラ麻 | |
| 黄麻(こうま) | 綱麻(つなそ) | Jute(ジュート) | シナノキ科 | ジュート | ジュート |
| 洋麻(ようま) | Kenaf(ケナフ) | アオイ科 | メスタジュート |
※家庭用品品質表示法による。
日本人は大麻とのかかわりが深く、例えば、神社のお祓いで神主さんが振る大幣(おおぬさ)は大麻の繊維が使われています。大麻には悪を祓う力があるとされてきたからです。また、七味唐辛子やインコなどの鳥のエサに入っている「麻の実」も大麻の実です。その点、亜麻と日本人のかかわりは主に明治以降です。亜麻は欧米文化の中で根付いてきた植物なのです。
亜麻の原産地は中央アジアといわれています。アマ科の一年草です。薄紫色や白色の花を咲かせます。観賞用に品種改良された亜麻もあり、多年草のもの、赤やピンクの花色の品種もあります。産業用の品種としては、大きく分けて、茎の繊維を採るための品種、種子を採るための品種があります。『亜麻の里』では種子を採るための品種を栽培しています。
亜麻はもともと中央アジアの乾燥地帯に自生していた植物です。紀元前8000年のチグリス・ユーフラチス文明では、自生していた亜麻を利用していた記録があります。中央アジアとエジプト、ヨーロッパが交流するようになると各地へ伝わります。
古代エジプトでも、ピラミッドの中の壁に亜麻の収穫の様子が描かれていますし、食用としていたという記録もあります。ミイラを巻いている布も亜麻の繊維で出来ています。
古代ギリシャでも、医学の父・といわれたヒポクラテスが、「亜麻を食べると胃腸の調子が良くなる」として、亜麻栽培を奨励していました。その後もヨーロッパでは、ローマ帝国のシャルルマーニュ大帝など、多くの首長が亜麻栽培を奨励しています。中世以降のヨーロッパでは、木綿が普及するまで繊維といえば亜麻でしたし、食用としても広く普及していました。
その後、ヨーロッパからの移民によって北米にも伝わります。
日本で最もふるい亜麻の記録は江戸時代、元禄の頃です。幕府の植物園に植えたという記録が残っています。当時、亜麻は亜麻仁という名で漢方の1種として中国から輸入されていました。比較的簡単に輸入され流通していたことから、定着はしなかったようです。
本格的に日本の歴史に登場するのは明治初期からです。北海道開拓使のお雇い外国人でベルギー人のトーマス・アンチセルが、「亜麻の実は食用となるし、茎からは繊維が採れる。北海道の開拓に重要な作物だ」と提唱し、当時のロシア全権大使/榎本武揚が、採繊技術を導入しました。化学繊維が作れなかった当時、繊維事業は国策として力を入れていました。札幌市の北7条東1~7丁目くらいの場所に、開拓使の官営亜麻工場ができ、全道に亜麻栽培が広がります。(ちなみに、同じ時期、北7条東8~15丁目くらいには官営ビール工場が作られています) 官営亜麻工場は、民間払い下げになり、その会社が帝国繊維という会社です。札幌市の北7条東1丁目にテイセンボウルというボーリング場がありますが、このテイセンは帝国繊維の略称です。(ちなみに、官営ビール工場は民間払い下げでサッポロビールになりました。現在、北7条東10丁目くらいにサッポロビール園があります)
その後、日清戦争、日露戦争、第1次世界大戦、第2次世界大戦など、多くの戦争によって亜麻繊維の需要が膨らみ、北海道での亜麻事業は飛躍的に拡大していきました。亜麻がラベンダー、ハッカと並んで北海道の三大特用作物といわれていた時代です。
戦後、科学技術の発展が著しく、化学繊維が安く作られるようになると、亜麻は次第に姿を消していきました。北海道庁の記録では、昭和43年が最後です。
そんな亜麻を、日本で、北海道で、再び復活させたのが『亜麻の里』です。かつての日本では茎から採れる繊維ばかりに目が向いていましたが、今、私たちは亜麻の実の油に注目しています。
亜麻は冷涼な気候を好みます。したがって、ミュンヘン、札幌、ミルウォーキー・・・ってサッポロビールのCMでしたか? 同じように亜寒帯地域です。
ヨーロッパ、カナダ、ロシア、ニュージーランドなどが主な栽培地です。繊維用の亜麻では、アイルランドやベルギーが有名です。種子用の亜麻では、カナダが世界一の栽培量を誇っています。
現在日本で亜麻を栽培しているのは、私たち『亜麻の里』の契約農家さんだけです。したがって、北海道でしか作られておりません。亜麻は冷涼な気候を好むので、日本では北海道が栽培最適地です。戦前・戦中、亜麻の軍需のふくらみで、当時の政府が無理やり本州でも作っていた記録がありますが、あまりうまくいかなかったようです。
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